マネジメントチームの作り方: 「ぶっちゃけ、名前借りてるんです」
こんにちは、経営コンサルタントの入野です。
新規事業の立ち上げにおけるマネジメントチームについて解説します。
個人事業は別として、IPOを目指すほどの事業の場合、どんなスーパーマンでも経営の仕事のすべてを一人でこなすことはできません。ひとりで経営できると想定してしまうと、逆に経営者としての資質や経験を疑われます。自分より優秀な人を巻き込めるかどうかが優れた経営者の条件です。
例えば、
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○○年○○株式会社に入社
○○年営業部長
○○年○○会社に入社
○○年取締役就任
・・・
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など、会社名と役職を羅列しているだけの例。
略歴としては許容できるレベルですが、
事業計画書の「マネジメントチーム」のセクションでは、
役職とは関係なしに、
具体的にどんな仕事でどんなエピソード(特に苦労話)があったかを表現するべきです。
ベンチャー企業の場合は「部長ができます」よりも「具体的にどんなスキルと経験があるか」が重要です。
例えば、
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A氏 代表取締役(CEO)
B氏 取締役(COO)
C氏 取締役
D氏 取締役
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のような例。
よりベターなのはこんな感じです。
A氏 | B氏 | C氏 | D氏 | |
大方針を最終決断する | 専 | |||
役員間のいざこざを防止・解決する | 副 | 主 | ||
この人がいるからスタッフがついてくる | 主 | |||
営業の戦略と実行を引っ張る | 副 | 主 | ||
提携先を連れてくる | 副 | 主 | ||
マーケティングをしかける | 主 | |||
研究開発を引っ張る | ||||
ITの企画・開発・運用を管理する | ||||
経理処理を管理する | 主 | |||
資金繰りを管理する | 主 | 副 | ||
銀行と交渉する | 主 | |||
個人補償を入れる | 主 | 副 | ||
VCからの資金調達をドライブする | 副 | 主 | ||
資本政策をドライブする | 副 | 主 | ||
生産を統括する |
ポイントは
- 役職よりも役割として具体的に何をするか
- 主で責任をとる人間を明確に
- 一人が欠けても会社がまわるように
- 未採用の足りない役割をゴマかさない(すぐバレるので)
業界の土地勘(ノウハウ、人脈、ブランド)があるかないかは新規事業の成否に深く関係します。
統計的には土地勘のない新事業はかなりの高い確率で失敗します。
IT・会計などのポータブルスキルとは違い、業界の土地勘は借りることが難しかったり、時間がかかる場合が多いのです。
本当に優秀な人材はカネでは動きません。情熱などのカネ以外のもので動きます。
また、ベンチャーはよい人材が集まって初めて資金が集まります。逆ではないのです。
いくら努力して結果を出しても、出世しにくそうな経営陣の陣容はNGです。
優秀な人材が集まってこないので。
たとえば、
- 同族だけだけが取締役
- 幼なじみだけが取締役
- ○○社OBだけが取締役
「経営がやりたい」と「この事業がやりたい」とは大違い。
例えば、ポストコンサルばかりの会社は要注意。
泥臭いたたき上げタイプの人がいないケース。
失敗や挫折、貧困の連続が当たり前のベンチャー企業としてはバランスが悪いのです。
アドバイザリーボードを含めた経営陣の世代バランスが悪いケース。
「ガキはダメだ」や「ジジイはダメだ」と自らの世代にプライドを持ちすぎている場合です。
各世代どうしでで得意なことと不得意なことを補えることが重要です。
ヤング世代があまり得意でないこと:
- 取引先の裏のドアを開ける長年の人脈
- トップダウンのセールスをしかける貫目
シニア世代があまり得意でないこと:
- 1日30時間働くタフさ
- 周りの人々に応援してもらう可愛げ
- ITのハンズオン開発
- ケータイ・ネットビジネス・F1世代の動向
IPOを経験したベンチャー企業の出身者も最近では増えましたが、
たとえ、創業メンバーであっても役に立たなかった人材は必ずいます。
「前職の企業がIPOしました」と「中心的に活躍すること」は大違い。
取締役として参画するには不適切な人材も多いので注意が必要です。
社長さんに「この取締役の人はどんな人ですか?」と聞いても、適格な答えが返ってこないケース。
お互いの得意なことが分かっていない証拠とみなされます。
得意なことが分かっていないと権限委譲ができないので、会社は成長できません。
喉から手が出るほど欲しい人材がいるケース。
でも、まだ他社で活躍していたり、奥さんの了解がとれていないなど、
諸々の事情で今はベンチャーに飛び込んで経営参画できない場合も多い。
そんな場合でも、「この時期になれば経営に参画します」という念書を取り付けて、投資家に優秀な人材の獲得を文書で証明する経営者もいます。
無報酬でも他人が自然と動いてくれるぐらいの人間的魅力のある経営者が、キャッシュの不足する事業立ち上げフェーズでは重要です。
アドバイザリーボードや取締役として、有名起業家や著名人を並べるのは「成功のにおい」をさせるには非常に有効です。
しかし、忙しい彼らが具体的なタスクを何かやってくれる機会は少ないのはベンチャーキャピタルも分かっています。
その現実を経営陣自身が分かっているかどうかが大切です。
「このビッグネームが○○事業をドライブしてくれます!」とありえないことを言うよりは、「名前だけを借りてるんですよ!」と明るくぶっちゃける正直さとリアル感を持つことが大切です。
ビッグネームから名前を借りられたこと自体は評価できるのですから。
本日は以上です。
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