人事戦略: 「チーターにもっと速く泳げと言ってしまう」
こんにちは、経営コンサルタントの入野です。
昨日のWBSでも映ってましたが
インターコンチネンタルホテルで1000人の聴衆を集め、
数々の応募の中から選ばれたビジネスプランコンテスト決勝戦。
ご支援させていただいた起業家が1位と2位のワンツーフィニッシュでした。
何よりもお二人の圧倒的な能力のおかげでしたが、私も鼻高々です!
本日は「人事戦略」について解説します。
どのような人材を採用・教育し、
どんな人事制度で、どんな企業文化を作るか、
ということを記述するセクションです。
ベンチャー企業には個性あふれる優秀な人材が集まります。
大企業の平均レベルよりも優秀な人材が集まるのが普通です。
世界/業界トップクラスの人材が集まるベンチャーもあります。
しかし、得意不得意の差が激しい人材が多いのが問題です。
「プログラミングは世界一、営業力や社会常識は中学生以下」という人材。
そこで、弱点を鍛えてあげようと考えると、よく失敗します。
理由は
- 弱みを指摘しすぎるとモチベーションをなくしたり、
せっかくの自分の強みに対する自信をなくす天才肌の人材も
多いので。 - そもそもベンチャー企業は弱みより強みが圧倒的に重要なので。
「脇が甘い!」と弱みを指摘してやりたくなることもありますが、
グッと我慢してあたたかく見守るという選択肢も考えてみて下さい。
地上最速のチーターに
水泳の練習をさせる必要はないのです。
採用面接の時にはどの候補者もネコをカブっています。
いかに優秀な面接官がいかに鋭い質問をしても、
30分や60分の面接時間だけでは、
素の状態にはなってもらえません。
ベンチャーで人材を見極めるためには
- ストレス状態や逆境の状態を見たことがあるか
- 小さな仕事でもいいので、一緒に働いた経験があるか
- 言いにくいことも話合えるか
- 人としての価値観を知っているか
という4つの条件が重要です。
しかし、これらの条件を満たすためには、
本来は長~い長~い付き合いが必要で、
短期間の採用プロセスでは見極められるはずがないのです。
それでも、
人材が必要な時は必要であるし、
必ずしも長い付き合いの人材ばかりを採用できるわけではないので、
たとえどんなに短い時間であっても、
あの手この手でネコを剥がす努力をしましょう。
短期的な努力としては
- 面接終了後に食事に誘う
- 小さな仕事を副業で頼む
- ブログを読む
- 過去の上司・同僚へのリファレンスは必ず取る
できれば、より長期的な仕組みを作っておくことが重要です。
長期的な努力としては
- 業界団体や交流会にネットワークを張る
- 20日以上のインターンプログラム
- ターゲット人材の会社に名指しで外注する
人材採用でミスマッチを起こすと、
ベンチャー企業にとってはダメージは大きいので、
コストはかけられなくても、テマヒマはかけるべきです。
ability ≒ 能力・スキル があることはもちろんですが、
likability ≒ 人に好かれる人柄がベンチャー企業では重要です。
社外のいろいろな人に助けてもらってはじめてベンチャーは成長するから。
経営陣だけでなく従業員みんながその意味で外部向けの営業です。
エクセレントベンチャーは社員1人に応援団が平均3~4人は付いています。
1人も知り合いに助けてもらえいないようなlikabilityのない人材は
ある意味、abilityも3分の1や4分の1以下なのです。
半年や1年ごとに上司と部下があらためて机に座って
今期の評価をして翌期の目標を設定するような業績評価や目標管理制度。
だいたい、うまくいきません。
なぜかというと、
-
- ベンチャー企業のスピード感は早いので、
半期先や四半期先のことなんて本当は分からないから。
- ベンチャー企業のスピード感は早いので、
- 「あの時はこうだった」と遠い過去を振り返って上司がダメ出しをしても、
本人は全く忘れているか、
自分の良いことしか覚えていないから。
とにかく早く現場でフィードバックをすることが大切です。
- 訪問先ミーティング終了後のエレベータの中
- たばこ部屋
- 移動中の電車の中
成功している企業は
あらためて人事をやるという運用よりも、
普段から人事をやるという運用をやっています。
スキルアップして欲しい若手人材。
外部の研修に送ったり、説教まじりのOJTで鍛えるが、
カネや時間がかかる割には効果が思ったほど上がらないケースも多いです。
そこで、
研修を受けさせるより、イキナリ研修の講師にしてしまう
というやり方もあります。
教える責任とプレッシャーのために、
自分の頭で本気で考えはじめるのがポイントです。
「みんなに教えてやってくれ」と
内部研修や朝会の席での短時間の発表という形でもいいので
教える立場にしてしまうのです。
成功している企業は、
とにかく、圧倒的にコミュニケーションの量が多いのが特徴です。
外資系のような雰囲気を持った先進的なITベンチャーであっても、
・ 全員参加の朝礼
・ 雑談するスペースや時間の確保
・ 社員旅行
・ 呑みニケーション
・ 休日も一緒に遊んでいる
など
意外と泥臭く、ウザいと言われるほど過剰なまでに
コミュニケーションが多いのです。
人事制度の成功のポイントは、
制度自体のユニークさではなく、
人や組織の実態を徹底的によく把握すること。
コミュニケーション量が多いということは、
・ 人材一人一人の性格・人生・価値観
・ 組織として成熟度や相互評価
などの
組織と人の実態を把握するチャンスが圧倒的に多いから
実態に即した制度の設計と運用をできる
ということかもしれません。
自分より優秀な人材が集まる仕組みをつくると経営者は非常に楽です。
例えば、人材輩出企業として有名なリクルート。
創業者の江副さんは、社内で最も優秀な精鋭を人事採用部門に集めて
リクルート社自体への学生採用を担当させました。
江副さんから人事採用部門への指令はシンプルに一点だけ。
「自分より優秀なヤツを採れ!」
ただでさえ優れた人材がもっと優れた人材を
あの手この手で必死で口説くので、
優秀な人材が集まらないわけがないですよね。
自分たちより優秀な人材が定着するには
・ 他人の才能にヤキモチを焼かない
・ 古株と優秀な新人をフェアに処遇する
などの難しい課題もありますが、
優秀な人材が働いてくれるような仕組みをいかに作るかが
経営者としては大切です。
感想やご意見を電子メールでいただくことは多いのですが、
先日、手書きの手紙をいただきました。
内容も非常に参考になるご意見でしたが、
手書きでいただいたのがなんだか「おおぉ!」と嬉しかったです。
手書きって、時間かかるぶんだけ、想いがこもっている感じがするのです。
Wさん、ありがとうございました!
本日は以上です。
入野