経営理念の作り方: 「スワヒリ語」
こんにちは、経営コンサルタントの入野です。
本日は企業理念・事業理念について解説します。
顧客、従業員、協力会社、株主、地球環境などのステークホルダーごとに
- 何をしてあげたいか
- 何ができるか
- どんな価値を提供できるか
を記述するセクションです。
社長が中心となって作っていくべきものではありますが、
社長だけの頭の中で練られた理念は定着化しません。
他の経営陣や従業員とのコミュニケーションを繰り返し、
あたかも各人が自分が考えたようなコミットメント感や一体感があるのがベター。
理念そのものよりも理念を作る過程が大切です。
よくある悪い例は英語のかっこいい言葉が並んでいるが、
実は意味がよく分からないケース。
かっこよさよりも分かりやすさが重要です。
グローバル企業を目指すならば、
どのような言語に訳しても伝わるぐらいの分かりやすさが必要です。
新卒を採用するようなIT企業ならば、
男性新入社員がパソコン音痴のオカンに説明してもわかるぐらいが目安です。
「企業理念は100年を見据えて作るべし」と一般には言われています。
なんとなく現実感がなくてウソくさいですが、
日本には会社が約600万社あり、
100年以上の存続している会社が約5万社もあると言われています。
意外と多いですよね。
ベンチャー企業に必要なのはとにかく優秀な人材。
大企業であれば年俸1200万以上の人材です。
ですが、優秀な人間ほどカネでは働きません。
給料大幅ダウンを覚悟で働いてくれるほどの社会的意義とやりがいと感動が必要です。
理念は行動に移せないと意味がありません。
しかも、毎日。できれば、この瞬間。
入社時にしか見ない社内規則や外部向けウェブサイトだけに書いてあるケースはあまりよくありません。
社訓を朝礼で皆で並んで唱和するのも実はアリです。
そんなのは古臭くて・・・と成功していないベンチャー企業ほど嫌いがちですが、
理念が社員一人一人の日々の言動に現れるような、何らかの代替案は探ってみましょう。
想いの強さは距離に比例します。
まだ顔も見たこともない顧客を想定するよりも、
身近にいるよく知った人のハッピーを願うほうがリアル感があります。
出版業で言われる統計上は
身近な一人を見つけると、その背後に35万人は同様のプロフィールのお客様がいます。
株式会社としてよりもNPOとして実現したほうがいいような
良い子ブリっ子な理念をたまに見かけます。
最近は社会起業家の例もありますが、
会社組織はやはり経済的存在。社会貢献性だけでは存在しえません。
あくまで商品やサービスに対価をもらって儲けることが基本です。
会社を潰せば、理念や倫理に共鳴してくれた人にも迷惑をかけますよね。
理念についてウェブサイトや社訓につべこべと能書きをたれるよりも、
素晴らしい理念は商品そのものやサービスする従業員の顔に滲み出ます。
独自のユニークな理念を掲げることは重要ですが、
本質的には他社と似ているような理念のほうが実務上は有利です。
他人や他社も共感できるような理念のほうが
起業に必要な応援団をつくりやすいし、
事業提携やM&Aにつながりやすくので、
ビジネスを大きくしやすいのです。
カネだけの関係が前提ならば、ビジネスは力関係。
スタートアップ企業にとっては不利なので。
理念や文化が合わないと時間と労力を浪費します。
そんな時間はスタートアップ企業にはありません。
余裕がある時は誰でも不正や妥協はしませんが、
理念が試される時は逆境の時です。
例えば、
- 赤字
- 資金不足
- 過去の経営者・担当者の不正やミスがすでにある
ベンチャー企業は普段から虐げられているので
子供のような甘えがでる時があります。
小さなことから倫理上の妥協を許さないことが重要です。例えば、
- 社会保険庁があんな感じでも、実質上罰則がなくても、社会保険に加入する
- カネが惜しくても、ソフト不正コピーを許さない
ベンチャービジネスは一般的に思われているよりも失敗する確率が高いのが現実です。
個人破産してしまったり、
離婚してしまったり、
人に裏切られて傷ついたり。
それでも、あなたの人生をかけるほどの価値のある事業かどうかを自問してみてください。
起業には多かれ少なかれ必ずツライ時期がきます。
そんなツライ時に経営理念を思い出して元気がでるかどうかが重要です。
ベンチャーはあたたかく応援してくれる人々も多いですが、
「外野」から蔑み、妬み、無関心が入り混じった好き勝手なことを言われます。
「世の中の人は何とも言わば言え。我が成すことはわれのみぞ知る」
(坂本竜馬)
周りにネガティブなことを言われ続けても信じ続けられますか?
一般的に起業家は独立心が強いので、
ご両親や奥さんに事業のことを説明していないケースが多いのですが、
健全な成功の条件はワークライフバランス。
一部のベンチャーキャピタルはリファレンスヒアリングの対象に奥さんをいれているところもあるので、事業の意義についてご家族から理解してもらっていることが重要です。
「この社会的意義を実現するために私は生まれてきた」と生まれた時から信じているケースは実際には稀です。
経営者の本音は
「生活するため」→「従業員を幸せにするため」→「世の中をよくするため」
と企業の成長に合わせてステップアップするのが普通。
逆のケース
「世の中をよくするため」→「従業員を幸せにするため」→「生活するため」というケースは稀で尊いのですが、正直ウソくさい。
いい経営者は事業の成長に合わせてその社会的意義に気づき、
良い意味で自分をだましてでも、その事業の理念を信じ込んでいく力があります。
成功したメガベンチャーの創業メンバーと
成功した後から入ってきたメンバーの力の差/意識の差。
いかに創業メンバーのカリスマ化/神格化を防ぎ、
自分の頭で考えて動ける次のリーダーを育てるか。
難しい課題ですね。。。
本日は以上です。